事例集

別居していた妻が遺族年金を請求したものの棄却された事例

公開日: 2015年8月10日
更新日:2018年12月18日

■平成23年(厚) 第980号
 
【主文】
本件再審査請求を棄却する。
 
【本件の問題点について検討し、判断する】
 
(1)遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持関係の認定に関して、保険者は、上記認定基準を定めているが、
生計維持認定対象者が死亡した者の配偶者であり、住所が死亡者と住民票上異なっている場合に死亡者による生計維持関係が認められるためには、次のいずれかに該当する必要があるとしている。

ア.現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
イ.単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき

 

(ア)生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること。
(イ)定期的に音信、訪問が行われていること。

(2)上記のような基準は、一般的・基本的なものとしては相当と解されるので、本件をこれに照らしてみると、上記1で認定した事実により、前記(1)のアに該当しないことは明らかであるので、前記(1) のイに該当するものと認められるかどうかが問題となる。
 
Aと請求人の別居は、単身赴任、就学又は病気療養といった事情によるものではなく、請求人の金融業者からの借金を契機とした夫婦の不和によるものであり、約○年間の別居期間中、Aは居所を請求人に知らせず、自らの年金によって1人で生活していたのであり、請求人に対し生活費等を送金していたと認めるに足りる資料はない。
 
また、請求人は、生計維持・同一証明書では、平成○年○月にAと話し合って和解したと述べているのであるが、事務センターの照会に対しては、Aの体が弱っており長い時間話をすることもできず、次の機会に話す予定だったと異なった内容を記載しており、Aと請求人が和解したとする上記記載は信用することができず、他にAと請求人が和解し、同居することを合意した旨の事実を認めるに足りる資料もない。
 
これらを総合すれば、前記(1) のイに該当するとみることもできない。
 
(3)以上によれば、請求人は、Aの死亡の当時、同人によって生計を維持したものと認めることはできないといわざるを得ないから、原処分は妥当であるというほかなく、これを取り消すことはできない。
 
よって、本件再審査請求を棄却することとして、主文のとおり裁決する。

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