事例集

【離婚後の内縁関係】亡くなる直前、勝手に住所変更で遺族年金アウト!?と思いきや、まさかの認定!

公開日: 2025年7月 3日
更新日:2025年7月 3日

【社会保険審査会裁決事例】※当センターがサポートした案件ではありません。
 
令和2年(厚)第238号 令和3年3月31日裁決
 
主文 原処分を取り消す。

事案概要


請求人は、Aが死亡したので、Aの夫であるとして、遺族厚生年金の裁定請求をしたところ、厚生労働大臣が、請求人に対し「事実婚関係及び生計維持関係がある者と認められない」という理由により、不支給処分とした。請求人は、原処分を不服として、審査請求を経て、社会保険審査会に対し、再審査請求をした。

争点


請求人がAと事実上婚姻関係と同様の事情にあり、生計維持関係にあった者と認めることができるかどうか。


結論


請求人は、Aの死亡の当時、同人と事実上婚姻関係と同様の事情にあり、また生計維持関係があった者と認められるから、請求人に対し、Aに係る遺族厚生年金を支給しないとした原処分は、これを取り消さなければならない。
 
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。

 

判断理由


戸籍上の夫婦でない者が、厚年法第3条第2項にいう事実上婚姻関係と同様の事情にあった者であると認められるためには、①当事者間に婚姻共同体を形成し、維持しようとする合意があること、②社会通念上婚姻共同体としての生活と認められる事実があること、の二要件が具備されていなければならないと解するのが相当である。
 
前記1によれば、請求人とAは、平成◯年◯月◯日に離婚しており、A死亡当時、請求人の住所はbの住所であり、Aの住所はaの住所であるから、同人と請求人は住所を異にしていたものと認められる。

しかしながら、請求人とAは離婚後も平成◯年◯月◯日から4年にわたりbの住所において同居して両名の年金収入で生活し、請求人が寝たきりになったAの介護を担っていたこと、Aは容体が悪化し、平成◯年◯月◯日に入院したが、入院後2週間でAの子が請求人に知らせずにAを自宅であるaの住所に引取り、Aは同年◯月◯日に同所で死亡したことが認められる。
 
このような経緯に照らせば、請求人とAの双方にbの住所で婚姻共同体としての同居を維持継続する意思があり、夫婦としての生活が継続していたものと認められ、Aは死亡直前にわずかの期間、請求人と同居していなかったにすぎず、このことを重視するのは相当でない。


 本案件のポイント

本裁決例離婚後の事実婚関係で「同居、住民票の住所が別」という案件となります
元妻が亡くなったことで、元夫が遺族厚生年金の請求


認定基準によれば、生計同一関係の取扱に関しては、下記の通り

ア 住民票上同一世帯に属しているとき
イ 住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき
ウ 住所が住民票上異なっているが、次のいずれかに該当するとき
 
(ア) 現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
(イ) 単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっている
が、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき

(a) 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
(b) 定期的に音信、訪問が行われていること

このうち、同居で、住民票上の住所が別の案件に関しては、上記ウの(ア)に該当することを証明する必要があります。

生計同一関係の認定は、死亡時においてどうであったかが見られます。

その為、これまで長年に渡り、住所が同一で同居していたとしても、亡くなる直前に諸事情で住所を変更してしまったり、親族によって勝手に住所を変更させられると、住所別案件になってしまう為、遺族年金受給のハードルは高くなってしまいます。

本裁決例は、離婚後も同居していた元夫婦のうち、元妻が亡くなる直前に子供が勝手に住所を変更してしまったケースになります。

子供達が勝手に元妻を引き取り、住所を変更しただけで、このような経緯がなければ、両者は夫婦としての生活を継続していたはずだということで、事実婚関係及び生計同一関係が認められた事案になります。

裁決例を見る限りでは、認定基準別表6の資料が提出された状況はうかがえませんでしたが、勝手に住所を変更されたという事情が推認できるような複数の証明資料の提出があったことから、事情が考慮されたものと考えられます。

年金事務所段階の審査では、やはり認定基準別表6の資料が重視されるので、不支給とされたのでしょう。
一方、社会保険審査会の再審査請求では、認定基準別表6の資料に限られずに諸事情を考慮しつつ総合的に判断してもらえる可能性があります。

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