事例集

重婚的内縁関係にある内縁の妻が遺族年金を請求したが棄却された事例③

公開日: 2015年8月19日
更新日:2018年12月13日

■平成22年(厚) 第422号
 
【主文】
本件再審査請求を棄却する。
 
・請求人:内縁の妻
・B:戸籍上の妻
・A:夫
 
上記認定事実によると、
BはAとの婚姻以来その死亡に至るまでの間、一貫してAと同人を世帯主とする住民票上の住所を同一にしていたことが認められるが、実際には、昭和○年ころから死亡するに至までの間、特別の場合以外は起居を共にすることがなくなり、別居状態にあったことが認められる。
 
一方、その間Aは一時中断した期間はあるものの、概ね請求人と起居を共にして同居していたものと認められるところ、本件記録により認められるAと請求人並びにK、L及びIとの生活関係を考慮すると、Aと請求人との間には、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意に基づく夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在していたものと認めるのが相当であり、請求人は、Aと婚姻はしていないが事実婚関係にある内縁の妻に当たるというべきであるが、一方、Aには戸籍上の届出のある妻・Bがあったのであるから、請求人はAと重婚的内縁関係にあった者であるということができる。
 
そして、本件通知の定めるところによれば、請求人が遺族厚生年金を受給するためには、先ずもって、AとBとの婚姻関係がその実態を全く失ったものとなっていることが必要ということになる。
 
そこで、昭和55年5月16日第13号通知の定めるところに従い、この点について検討するに上記認定のとおりAとBは永年別居しており、その別居状態は固定化していたとはいえるけれども、当事者間には経済的な依存関係が反復して存続していたのであり、当事者間の意思の疎通を示す音信又は訪問等の事実も反復して存在していたことが認められるのであって、これらの事実に、Aが平成○年○月○日に東京法務局所属公証人Pに対して作成を嘱託した遺言公正証書によると、Aがした遺言は、最高裁判所平成元年(オ)第174号同3年4月19日第二小法廷判決・民集第45巻4号477頁がいう、特定の遺産を特定の相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法を指定する形式の遺言であり、これによりその遺産をF及びGに相続させることとした上、「遺言者の妻Bは、遺族年金の収入にて、第3条記載の建物(注:bハイツ)にて生活してください」との付言をしていることが認められること、上記遺言書には請求人のことはもとより認知した子であるLに関する件は一切出て来ないことを併せて考慮すると、Aは、bハイツに住むBら家族と、○○○○の居宅に住む請求人ら家族の二つの家族を持ち、それぞれの住居を確保して生活費を負担し、Bの子であるF及びGを○○○に留学させ、請求人の子であるLに対しては○○大学における教育を受けさせて医師にまで育て上げていることからも分かるように、二つの家族それぞれとの関係を適度に調整しながら、Bとの婚姻関係及び請求人との事実婚関係の双方を維持し、いわば二人分の人生を送ってきたものといえるのであり、もとより、そのうちのBとの婚姻関係がその実態を失って形骸化していたものということは到底いえない。
 
そして、本件通知によれば、婚姻の成立が届出により法律上の効力を生ずることとされていることからして、届出による婚姻関係を優先すべきことは当然であり、したがって、届出による婚姻関係がその実態を全く失ったものとなっているときに限り、内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定するものとすることとされているのであるから、争点2の如何、すなわち、請求人がAと内縁関係にあり、且つ、Aの死亡の当時、Aによって生計を維持していたか、否かにかかわりなく、請求人は、Aに係る遺族厚生年金を受けることはできないものというべきである
 
以上の認定及び判断の結果によると、請求人に対し、遺族厚生年金を支給しない旨の原処分は、結論において適法かつ妥当であり、本件再審査請求は理由がないからこれを棄却すべきである。
 
よって、主文のとおり裁決する。

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