事例集

負債のため別居していたものの経済的援助を受けていた元妻が遺族年金を請求したが、棄却された事例

公開日: 2015年8月10日
更新日:2018年12月13日

■平成22年(厚) 第291号
 
【主文】
本件再審査請求を棄却する。
 
【本件の問題点について検討し、判断する】
(1)遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持関係の認定に関して、保険者は「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱い(平成6年11月9日付庁文発第3235号社会保険庁運営部年金指導課長通知)」を定めているが、
生計維持認定対象者が死亡した者の妻であり、住所が死亡者と住民票上異なっている場合に死亡者による生計維持関係が認められるためには、次のいずれかに該当する必要があるとしている。

ア.現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき
イ.単身赴任、就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき

(ア)生活費、養育費等の経済的な援助が行われていること。
(イ)定期的に音信、訪問が行われていること。

(2)上記のような基準は、一般的・基本的なものとしては相当と解されるので、本件をこれに照らしてみると、前記第3の2で触れたように、亡Aの死亡当時、同人と請求人は現実の住所も異にしており、現に起居を共にしていたわけではないから、本件の場合がアに該当しないことは明らかである。
 
そこで、イに該当するものと認めることができるかどうかを検討するに、前記1の認定事実を総合すれば、
 
請求人と亡Aは平成○年○月ころから別居状態となり、亡Aの死亡に至るまで解消されることもなかったところ、そのような状態となったのは、亡Aが経営していた会社の倒産とそれに伴う負債の返済、亡Aの女性問題などにその原因があったもので、イに示されている「単身赴任、就学又は病気療養等」、あるいはこれに類するものといえるような止むを得ない事情によるものではなかったと認めるのが相当である。
 
そして、平成○年○月ころに一時金として○○○万円程度の金員、さらに平成○年○月に一時金として○○万○○○○円の金員が亡Aから請求人に支払われたことは認められるが、平成○年○月ころには亡Aから請求人への定期的な生活費の支給も途絶えたとされており、前記1の(5)で認定した資料6の通帳上の複数回の入金も、それがどのような趣旨の入金であるのか明らかでないから、請求人は、平成○年○月ころから亡Aとは別生計を営んでいたとみるのが相当であり、
 
さらには、本件資料上、別居の事情が消滅したときは、起居を共にし、消費生活上の家計を一つにするとの請求人と亡Aの明確な合意が存したことを見いだすこともできないから、本件について上記イに該当するものと認めることはできないというべきである。
 
また、請求人は、亡Aとは電話と手紙で連絡をしていた、亡Aは年に3回くらい請求人を訪ねていたなどと主張しているが、その主張を裏付ける資料の提出はないから、請求人の主張をそのまま採用することはできず、仮にそうした音信・訪問の事実があったことを認定することができたとしても、上記のイに該当しないとする認定・判断に消長を及ぼすものではない。
 
(3)以上によれば、請求人は、亡Aの死亡の当時、同人によって生計を維持したものとはいえないというべきであるから、原処分は妥当であって、これを取り消すことはできない。
 
以上の理由によって、主文のとおり裁決する。

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